今回、宅録の収録システムを大幅に見直し・改善する運びとなりました。
従来よりも遮音性を向上し、またマイクなどもより設計思想に合ったものに換装していく予定です。

その中で今回、「LCT 640 TS」というマイクについて紹介したいと思います。
主に水音収録で、粘膜音など繊細な音を捉える用途で使っていたのですが
水音のキャラクターを、録音後にもう少し細かく調整するために今回このマイクを選びました。
LCT 640 TSとは
LCT 640 TSは、LEWITTの大型ダイアフラム・コンデンサーマイクです。
普通のマルチパターンマイクとしても使えますが、大きな特徴はDual Output Modeです。
このモードでは、マイクカプセルの前側と後ろ側を、それぞれ別のチャンネルとして録音できます。
つまり、一本のマイクでありながら、前から入る音と後ろから入る音を分けて残せるわけです。
POLARIZERで指向性を後から変えられる
から入る音と後ろから入る音を分けて残せる大きなメリットとしては
「収録済みの音源でも後からマイクの指向性を変更できる」という点です。
LCT 640 TSには、POLARIZERという専用プラグインがあります。
マイクの指向性はダイアフラム前後の位相差により産まれるのですが
これらを別々のデータとして残しておくことで、録音後に指向性を調整できるわけですね。
粘膜音は場面ごとに出方を変えたい
たとえば、挿入や体位変更など、体位が変わる場面など。
こういう場面では、少し誇張して粘膜音を前に出してあげたいのですが…
Hzの水音収録のシステムはナチュラル寄りなので、こういった場合単純に音を重ねるか、音量を上げるしかありませんでした。
しかし、「指向性を後から変えられる」という選択肢が取れるようになったことで
場面ごとに粘膜感を誇張(あるいは引っ込める)事ができるようになるのではと考えています。
つまるところ、結合部から鳴る音のトランジェントをコントロールしたい、という思想です。
マルチマイクで収録しているため、大きく音が変化する訳ではないとは思いますが
この若干の変化の積み重ねが、よりリアリティとして作品に反映される…と思っています。
前後のダイアフラムを使った前後感
LCT 640 TSの面白いところは、マイクの表と裏を別々に録れることです。
ここで考えているのが、身体が前後に揺れる感覚の表現です。
現段階では上手く実現できるか分からないのですが
マイク前後の成分を別々に扱えるなら、音の前後感として応用できるかも…?とか考えています。
身体の前後運動を、音として伝えられるようになれば面白いんじゃないかなと。
機材変更ではなく、設計思想の更新
LCT 441 FLEXも、指向性を切り替えられる良いマイクです。
ただ、基本的には録音時点で指向性を決めるマイクです。
一方でLCT 640 TSは、録った後に指向性を詰めることができます。
現場で一つの正解を決め切るよりも、編集段階でシーンに合わせて調整できる方が強い場面があります。
まだ試したいことは多くあります。
POLARIZERで、どこまで粘膜音の距離感を調整できるのか。
前後のダイアフラムを使って、身体が揺れるような前後感を作れるのか。
バイノーラルマイクと混ぜた時、どのくらい自然に馴染むのか。
このあたりは、今後の収録で少しずつ試していきたい部分です。
今回の変更で、いきなり水音が劇的に変わるわけではないと思います。
ただ、録った後に調整できる余地が増えたことで、シーンに合わせた細かい変化は作りやすくなりました。
LCT 640 TSは、そうした試行錯誤の幅を広げてくれるマイクだと感じています。